多種多様 ハンドドリップの世界

ここでは、ハンドドリップの多様な世界を俯瞰的にご紹介いたします。

目次

ハンドドリップによる透過法と浸漬法

ここでの浸漬法を「ハンドドリップ」に位置付けるかどうかは難しいところです。道具等の類似性を考え、あえて載せさせていただきましたが、ハンドドリップは基本的には透過法による抽出ということになると思います。”ハンドドリップ風”浸漬法として、ハリオの「スイッチ」、クレバードリッパーが2台巨頭といってよいでしょう。

透過法ハンドドリップの大分類

ハンドドリップといえば透過法です。しかしその裾野はとにかく広いです。大きくペーパードリップネルドリップ、その他としてステンレスフィルター、セラミックフィルターに分類されるでしょう。

ペーパードリップ

もっとも一般的なのはペーパーを使ったドリップ。肌感覚でいうと、90%以上のシェアを占めているのではないでしょうか。ペーパードリップが最も普及している理由はやはりその手軽さ。後処理が楽というのは、継続していくうえでとても重要な要素です。さらに、一般的には「コーヒーオイル」と呼ばれる成分がペーパーに吸収されるため、すっきりとした飲み口になるという点も人気の理由です。
ただ、手軽な分、ペーパーを購入しなければならず、ランニングコストが発生します。さらに、ペーパーに何を選ぶかという可変要素が発生して、突き詰めすぎると何が正しいのかわからなくなるという危うさもあります。

ネルドリップ

続いてネルドリップ。フランネル(布)をフィルターとして使用してドリップする方法です。ペーパーと比較するとコクのあるコーヒーを抽出するのに向いています。コーヒーオイルが微量に、適度に抽出されることがその独特なコクに結び付いています。ペーパーよりもお湯の抜けが早いため、湯を注入するときゆっくり微速の「点滴ドリップ」でその個性が引き出されます。古くからのコーヒーマニアに好まれています。しかし、この個性的な味を引き出すため、ネルの管理という継続していく上では大きな負担が発生します新品を使用する際は、のりを落とすための煮沸は必須です。

その他のドリップ

その他としてステンレスフィルター、セラミックフィルターについて。双方ともペーパー等を使用しないため、ランニングコストがかからないことが特徴です。また、ペーパー、ネルと比較してコーヒーオイルがしっかり抽出されるため、ペーパーとは一味違う風味を楽しみたいときにその特性を発揮します。難点なのは抽出後のコーヒーかすの処分が面倒なことです。ペーパーに慣れた方には、負担に感じられる方も多いかと思います。セラミックフィルターについては、定期的な煮沸やハイターのような塩素系を用いた洗浄が必要になる点も、普及を妨げている要因といえます。なお、微粉も抽出されてしまうという点もマイナス要素のひとつかもしれません。
ステンレスフィルターには1層式と2層式(ダブルメッシュ)があります。ダブルメッシュのほうが微粉の抽出を大幅に軽減することができます。

ペーパードリップの分類

ペーパードリップはドリッパーの形状で大きく扇形円錐形ウェーブ式の3つに分類できます。

扇形の特徴は、「安定した抽出」です。抽出速度がそれほど早くならず、湯を早く注ぎすぎても出口が細いため速度を制御してくれます。初心者が安定した味を出したい時、または基本の味を出したい場合は扇形が向いています

円錐形は、実に多種多様、数多くの種類が各メーカーから販売されています。これはひとえに、「抽出の自由度が高い」ことが理由といえます。ゆっくり注げばコクが出て、早く注げばよりスッキリしたものになります。しかし自由度が高いということは「求める味を出すには技術力が求められる」、つまり難しいとも言えます。知識と技術を駆使して求める味を抽出する、プロ仕様ともいえるでしょう。
リブの長さや形状、様々な考え方をもとに多くのメーカーによって試行錯誤のうえ様々な種類が開発され、まさにドリッパー界の激戦区といえるのではないでしょうか。

ウェーブ式は、カリタのウェーブドリッパー一強という感じです。その構造から、カリタらしく「安定した抽出」をコンセプトに設計されています。専用のウェーブペーパーがやや高価ですので、ランニングコストは高くなります

最後に〜 抽出工程は「最後の砦」

豆の品質、焙煎の状態などは、味わいを決めるうえで決定的な要素といえるでしょう。しかし、抽出を適正に行えなければ、「すべて台無し」という事態になってしまうと考えます。すべての工程がコーヒーをいただく、もしくは提供するうえで欠かせず重要です。抽出は、一般的な消費者がかかわる唯一ともいえる工程です。よりおいしくするため、豆の個性を引き出すため、ともに知識と技術を高めていきましょう。いろいろな意味で、抽出工程はコーヒーをいただくうえで「最後の砦」ではないでしょうか。

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